〈伝達〉のいかがわしさ

それなりに知られたコマーシャルクリエイターのお話を聞く機会があった。そこで改めて知ったのは、次の二つに聴衆の関心は集中するということである。 一つ目は、「なぜ、○○を起用したのか?」や「どうして、こういう展開なのか」といった、コマーシャルにお…

「どういうわけか」許せない…

友人の結婚式で、随分と丁寧に作られたパワーポイントを見て、関心したことがある。なんというか、パワーポイント的に話を進めていく身体がしっかり出来ていて、話の内容ではなく、そのようにして話していること自体が、もう一つの内容になっているのである…

一人暮らしのアーカイブ化

都内へ行く時は「急行」が当たり前だった私にとって、所謂「上京」の経験はない。とはいえ高校卒業までは、「東京=山手線の内側、譲っても23区内」だと悪友に吹き込まれていたので、「03」という市外局番の省略が自明ではなく、「お前んちに電話すんの、め…

高校生と大学生の差異

たまに高校へ行くと、学校的日常にぐっと吸い寄せられる。バス停から校門まで小走りする生徒がいて、校舎に入れば上履きに履き替える。どこかそっけない事務室と靜かな校長室を横目に、手描きのポスターが貼られた廊下を足早に抜けると、ざわざわとした職員…

展示物としての論文

18歳の頃、「えっ?シェイクスピアス?」とマジメに聞き返した友人がいて、当時所属していた大学の社会的な位置を改めて知ったことがある。だから7年前に、「ドストエフスキーって誰なんですか?」(大学院生)→「私はついにその日が本当にやってきたことを…

デザイナーを書き取る可能性

今更だが、デザインそのものではなく、デザイナー語りこそ、私の好みである。なかでも「この作品の本当の意図は…」といった作品語りではなく、「心から好きなことを話せる友達はいなかった。でも今はこの仕事で…」といった自己承認語りが、お気に入りである…

「武道館に行きたくないのか」?

「武道館に行きたくないのか」。2008年秋からのNHK連続テレビ小説「だんだん」では、芸能事務所のマネージャーが、このようにして島根・松江の少年少女を誘惑する。なんともいやらしい役なのだが、ふと「この殺し文句はまだ有効なのか?」と思う。バンドにと…

デザインのコトバ、評価のコトバ

授業評価調査の結果。担当科目は、文学部芸術学科の視聴覚教育メディア論。学芸員資格科目の一つで、メディア論的な考え方とワークショップのデザインができるようになることが授業の目的。諸事情を鑑み、簡単に公開。 調査平均点を上回ったのは、(1)出席…

放送の固有性とは何か

公開授業を兼ねた『テレビ放送実習』の本番収録を行った。埼玉県立芸術総合高校の映像芸術科では、県内の放送局スタッフと連携して、生番組形式のスタジオワークを行ってきている。簡単に言えば、高校生による番組企画で、映像の制作や編集、スタジオでの撮…

ワークショップの擁護

ワークショップ開催のため、二泊三日で長野県・安曇野へ。武蔵野美術大学芸術文化学科は、2002年より長野県安曇野ちひろ美術館や松川村役場と連携して、地域の理解と創作活動を組み合わせた実践を行ってきている。簡単に言えば、美大生が企画する市民参加型…

渋谷は、全体的に特徴がない。

ワークショップのデザインを、講義の後半で行った。「都市空間とメディア・リテラシー」という設定で、各チームは、まず任意の都市空間に対して事前に持っているイメージを出し合い、次にメディアでいかに表象されているのかを調べ、実際に街へ足を運び、イ…

あぁ、俺はVJだったのか。

講義へのコメントの中に「今日のビデオの選択は…」とあって、「あぁ、俺はVJだったのか」と知る。笑いがとれない芸人の見習いだが、「映像や、パワーポイントがあって、楽しいです!」という優しい声を、そのまま受け止めてあげられるようになりたい。 6月…

美大生なのに、絵が描けないかもしれない不安

ご無沙汰しております。あっという間に、博士課程も三年目。レオパレス21のような福武ホール(http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/)を見る度に、「入るのが簡単になった分だけ、消え去るのも簡単になったな…」と思うこの頃。やるべきことを、始めることにし…

続・デザイン批判の困難

デザインに「コンセプト」は、本当に必要なのか。そのコンセプトは、あるデザインに対して、どれほど固有の関係を持ち得ているのか。むしろデザインにおけるコンセプトなど、状況に応じてどのようにでも語れてしまう、不安定で都合の良いコトバなのではない…

30代の緩い連帯

20代に慣れ始めた頃、サブカルチャーを語る30代は、「まだまだ私も…」と主張しているようで、「そんなに無理しなくても…」と思っていた。今となってみれば、自分がそのように思われるのだろう。私の20代は、東京国際マラソン(2005年)で優勝した高橋尚子の…

「モデル、やっています」?

「モデル、やっています」と言われて、返事に困ったことがある。「すごいねー」とも言えないし、かといって「ふーん」と聞き流すのも悪いかなと思ったからだ。かといって、それを認めないというのではない。 しかしモデルを「自己表現」であるかのように語ら…

生存戦略としての章立て

自分の出来はともかく、人の論文に対してコメントする機会が増えた。昨年もそうだったが、1月や2月は論文提出の時期なので、奇妙なまでに啓蒙的になる。今年は学部卒業論文の発表を各所で聞いたので、以下のような「理想論」を、今のうちにぶちまけておき…

なぜ「強くあれ」か?

「強くあれ」。このようにしか、声をかけられない時は少なくない。勿論これもまた、一つの押しつけである。しかし人の話に耳を済ませば済ますほど、簡単に「弱くあれ」とは言えない。その弱さの肯定が、なにかしらの支配関係や現状維持を補強してしまうのな…

急行の身体/各駅の身体

工場やダムに「萌える」写真集が話題のようだが、私の好みは「鉄塔」である。といっても、それぞれを「ドラキュラ鉄塔」や「ジャミラ鉄塔」と分類する程ではなく、なんとなく空を一緒に眺めるのが好きな程度だ。だから本当は「ゴルフセンターの鉄柵」でも、…

一段ズラしの啓蒙。

「●●を使って、分析する」という言い方が、あまり好きではない。ある分析概念を「なんでそこまで信じられるのだろう」と思ったり、ひどい場合には「私も●●学派ですので、どうぞよろしく」的な言明にしか聞こえないからだ。勿論「方法論の無視」は問題だが、…

メディア論を女子に講義する困難?

【1】「メディア論を女子高生に講義すること」に困難を感じていたら、「メディア論を女子大生に講義すること」に困難を感じていた方々に会った。メディア論のトピックは、どうしようもなく男子臭が強く、自分が面白いと思えば思うほど、女子には伝わらない…

もっとカボチャをリスペクト

新秋津から秋津までの間に、美味しそうな洋菓子屋がある。今日覗いたら、店員みんなでトンガリ帽子をかぶってた。毎年この時期に思うのだが、私はハロウィーンの迎え方がまったく分からない。クリスマスのようにも徹底されない中途半端さが、どうにも心地悪…

二つの「一人前」。

「役ではなく、一人の表現者として…」。この差異に敏感になってしまった沢尻エリカ(数日前まで「沼尻エリカ」だと思ってた…)は、これまでの言行は別に、可愛そうである。「自分」でありながら、「自分」ではない。しかし「自分である」と、言わないわけに…

どこまでも同じ風景を。

映画『NANA』やドラマ『東京タワー』には、私が住む街が登場する。その設定はどちらも似ていて、要するに地方から上京した夢追いキャラが、家賃の安さを優先して、とりあえず最初に住み着く街だということ。住まいはギリギリ東京都で、目の前には多摩川が流…

二つの「生きさせろ!」

リラックスしたい時には、ギターをぶら下げる。ストラップが肩にかかる感覚は、不思議と落ち着くもので、大して指が動かないにもかかわらず、ブラブラと部屋のなかを歩き廻る。妄想体操みたいなものである。 さて「生きさせろ!」と主張するのは、雨宮処凛だ…

理由なき可視化は「無視」される

ここ半年位はライブツアーをしながら新曲を作るミュージシャンのような生活だったので、この夏休みはスタジオミュージシャンのような生活にしたい…。 「Ubiquitous Media: Asian Transformations」では、英語原稿を念仏のように読み上げて終了(ちーん)。昨…

メディア・リテラシーの行方

セール初日を初体験。開店前の行列&ダッシュで、狙った獲物を即購入。何やってんだ…と反省する間もなく、30分で帰宅。スガシカオの新曲「フォノスコープ」は、やっぱり買わないことにした。 さて熊本学園大学でのマス・コミュニケーション学会での収穫は三…

データベースか、物語か。

どうしようもできない…、でもジッとしてもいられない。世の中からバンドがなくならないのは、こうしたことが少なくないからだ…。そんな気分の先週末から、少しだけ回復しました。 「デザインを語ることは不可能なのか」(@神戸芸術工科大学)への反応は、と…

括弧の美学

ご無沙汰です。毎年この時期は忙しく、雑文を書く余裕がなかなかみつからない。効率を上げるため、23時に就寝、5時起床の毎日に。 原稿を書く機会は増えたのに、なかなか括弧の数を減らせない。強調というよりも、引用であることを示し、そして反論の余地…

政治的無関心の徹底

左翼が「保守論壇のおもしろさに勝つことのできない」のは、「政治的言説のゲームのルールが決定的に変わってしまった」からだという(毛利嘉孝「ストリートが左翼を取り返す」『論座』4月号、朝日新聞社)。確かに『諸君!』(4月号、文藝春秋)を立ち読み…