2022年:回顧と展望
コロナ禍三年目。ワクチンの三回目を2月末、四回目を10月末に接種。感染者数が少し落ち着いた4月と5月はライブへ行き、6月は対面のメディア学会で研究仲間と再会。長らく控えていた会食を再開したのは8月下旬で、11月初旬の日本社会学会の頃には締まりのない状態に。秋から冬にかけて「第8波」と言われるようになったが、もう何がなんだか。感染した知人も増えるなか、ひたすら手指消毒、手洗い、うがいの日々。健康管理を最優先に、心身の回復に努めた一年となりました。
今年の業績は以下の通り。
・Takashi Kashima, "This Excess Called Lassen: What is it that Art History Cannot Write?", in Why Art Criticism? A Reader, eds. Beate Sontgen and Julia Voss (Berlin: Hatje Cantz), 2022: 379-385, https://www.hatjecantz.de/why-art-criticism-a-reader-8050-1.html
・Takashi Kashima, Tokyo 2020 emblem problem and sociological description: Focus on the way of making and using designs (English version), 『東海大学紀要文化社会学部』(第7号)、2022年2月、pp.107-122、https://researchmap.jp/takashi-kashima/published_papers/36486261
・Takashi Kashima, Media History and the Historical Sociology of Media in Japan, 1990s-2010s. (English version) ,『東海大学紀要文化社会学部』(第8号)、2022年9月、pp.127-143、https://researchmap.jp/takashi-kashima/published_papers/39872112
・Takashi Kashima, "Design history of the Tokyo 2020 Olympic Games: Emblem Selection and Participatory Design", The Review of Japanese Culture and Society, Vol.33, 2021, University of Hawai'i Press, forthcoming, https://muse.jhu.edu/journal/604
コロナ禍で海外出張できなかったので、業績を英語化。『ラッセンとは何だったか?』(フィルムアート社、2013年)に収められた拙稿「ラッセンという過剰さ:美術史は何を書くことができないのか?」はクリスチャン・ラッセンのメディア・イメージを社会学的に論じたものだが、これが英語圏の美術史・美術批評のreaderに掲載されるとは予想もしない展開で、とても嬉しかった。また『年報社会学論集』(No.33、2021年)に掲載された「2020年東京大会エンブレム問題と社会学的記述」と、『マス・コミュニケーション研究』(No.93、2018年)に掲載された「メディア史とメディアの歴史社会学」も英訳。紀要の電子化でアクセスが容易になったので、国際発信に便利。あとは東京大会のデザイン史に関する英語論文が日本研究の国際査読誌に掲載される予定。英語論文での投稿は今後も進めていきたい。
・「学生街としての相模:青山学院大学厚木キャンパスと本厚木」+「幻の厚木モノレール構想」、塚田修一(編)『大学的相模ガイド』昭和堂、2022年、pp.159-173、pp.174-176、http://www.showado-kyoto.jp/book/b612292.html
2月に集中して調査した原稿。厚木市立図書館に何度も通い、面白い資料を見つけて興奮した。やはり調査は楽しい。夏には愛川町にも出かけ、ベトナム寺院・カンボジア文化センター・在日本ラオス文化センターにも訪問。テーマを決めるまで時間がかかったけれども、今後の展開可能性をいくつも見つけられ、充実の仕上がり。初めての地域研究。
・元森絵里子+加島卓+牧野智和+仁平典宏「ワークショップ時代の統治と社会記述:新自由主義の社会学的再構成」『年報社会学論集』(第35号)、2022年8月 、pp. 24-31
関東社会学会での研究委員会企画(2020年度〜2021年度)はメンバーに恵まれ、とても楽しかった。歴史社会学で博士論文を書いた四人がそれぞれに目の前の事象と向きあい、社会学者として何ができるのかを考えた二年間だった。
・「東急ハンズとその時代――「手の復権」からカインズによる買収まで」新潮社Foresight、2022年5月 、https://www.fsight.jp/articles/-/48835
2021年の年末に発表されたカインズによる東急ハンズの買収。『無印都市の社会学』(法律文化社、2013年)の拙稿「縦長店舗と横長店舗:東急ハンズ」を大幅に加筆修正した原稿で、当初は別のサイトに掲載される予定だったけれども、新潮社Foresightに掲載。多くの方に読まれた。続編をお願いされているのだが、ズルズルと年を越すことに(すみません)。
・「2025年大阪・関西ロゴマーク選考と市民参加」『科学研究費補助金基盤研究(B)「万国博覧会にみる『日本』——芸術・メディアの視点による国際比較」中間報告書』東京工科大学、2022年3月、pp.30-40
ドバイ万博へ行く予定だったのだが、コロナ禍で結局行かれず。大阪・関西万博や市民参加をテーマに研究をまとめる方向へ。
・「デザインと社会学をめぐる群像:嶋田厚・柏木博・東京大学社会情報研究所」第74回文化社会学研究会、2022年9月24日、オンライン
・加島卓「計画的陳腐化と社会学的記述」第95回日本社会学会大会、2022年11月12日、追手門学院大学、https://jss-sociology.org/news/20220829post-13215/
・加島卓「ワークショップ時代の芸術文化と市民参加」文化芸術におけるSDGsのためのファシリテーター育成事業、2022年12月11日、東京大学、https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/art-sustainability/
・加島卓「宅地開発と郊外型大学:少子化とグローバル化のなかの青山学院大学厚木キャンパス」東海大学文化社会学部広報メディア学科FD活動、2022年12月14日、オンライン
・加島卓「大阪万博のデザイン史 1970/2025」万国博覧会における「日本」――芸術・メディアの視点による国際比較シンポジウム、2022年12月17日、オンライン
秋から冬にかけて、研究報告が続いた。日本社会学会での報告は、関東社会学会の研究委員会での企画を個人的に引き継いだもの。文化社会学研究会では社会情報研究所を軸に発表したけれども、実際の原稿は柏木博さんを軸に吉見俊哉さんとの交流、そしてデザインの社会史、広告の社会史、広告都市論への展開などを書くかも。
今年の3月に父を送り、喪に服した。同じような経験をした方から暖かい声をかけられ、思ったよりもこの社会は優しいことを知った。今の私にできることは『デザイン史の名著(仮)』の執筆などを進め、新しい報告を天国に届けられるようにすることである。
本年もお世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いします。