オリンピック・デザイン・マーケティング

 このページは、加島卓『オリンピック・デザイン・マーケティング:エンブレム問題からオープンデザインヘ』(河出書房新社、2017年、https://www.amazon.co.jp/dp/4309248357/)を紹介するものです。ここでは本に関する情報(まえがき、目次、正誤表、書評、関連情報など)を公開します。

▼概要
 本書は「パクリかどうか?」や「出来レースかどうか?」という論点を抱えた2020年東京大会エンブレムをめぐる混乱が一体何であったのかを、デザインの歴史およびマーケティングの歴史を参照しながら問い直したものです。
※2018年度全国学図書館協議会選定図書
▼推薦文

2015年、突如出現した2020年東京オリンピックパラリンピック「エンブレム問題」。デザインのオリジナリティとは何なのか、デザインのコンペはどのように行われてきたのか、主催団体、広告代理店、メディアそして市民はそれぞれどのようにかかわってきたのか。本書は、デザインや広告の歴史を丁寧に検討し、実は「エンブレム問題」とはその真偽を越えて、はるかに複雑な社会学的な事件であったことを照射する力作である。
――柏木 博(デザイン評論家/武蔵野美術大学名誉教授)

エンブレム問題は、東京五輪の時だけではなかった。「あの騒動」を検証するだけでなく、デザインや広告の抱える本質的課題に迫る、文化社会学の新たな羅針盤
――荻上チキ(評論家/編集者)

▼著者インタビュー

・話題の新刊『オリンピック・デザイン・マーケティング』著者・加島卓氏インタビュー――「エンブレム問題」とはいったい何だったのか、いまだから問い直す(Web河出、2017年11月24日)、http://web.kawade.co.jp/bungei/1711/

▼まえがき

・まえがき公開! 話題の新刊『オリンピック・デザイン・マーケティングーーエンブレム問題からオープンデザインヘ』のねらいとは?(Web河出、2017年12月11日)、http://web.kawade.co.jp/bungei/1754/

▼目次

まえがき
第1章 美術関係者からデザイン関係者へ
 1−1 オリンピックシンボルとエンブレム
 1−2 幻の東京大会と美術関係者
 1−3 東京大会と亀倉雄策
第2章 「いつものメンバー、いつものやり方」へ
 2−1 日本万国博覧会と勝見勝
 2−2 札幌冬季大会・沖縄国際海洋博覧会とデザイン関係者
 2−3 マークの「作り方」
第3章 デザイン関係者から広告関係者へ
 3−1 マークの乱用と商業利用
 3−2 広告代理店の登場とロサンゼルス大会
第4章 エンブレムとオリンピックマーケティング
 4−1 寄付からマーケティング
 4−2 長野冬季大会とスポンサー優先社会
 4−3 「作り方」から「使い方」へ
第5章 東京大会への道
 5−1 ロンドン大会と知的財産保護
 5−2 電通と大会招致
 5−3 東京大会とデザイン関係者
第6章 エンブレム問題:パクリかどうか?
 6−1 発表から取り下げまで
 6−2 ネット世論と識者の説得
 6−3 佐野案の「作り方」と「使い方」
第7章 エンブレム問題:出来レースかどうか?
 7−1 広告関係者への疑惑と選考方法
 7−2 組織委員会による参加要請文書
 7−3 「作り方」と「使い方」の調停
第8章 新エンブレム:市民参加とオープンデザイン
 8−1 市民参加とエンブレム委員会
 8−2 専門性 対 大衆性
 8−3 市松模様と意図せざる結果
あとがき

▼関連イベント

『オリンピック・デザイン・マーケティング』刊行記念
「エンブレム問題から考えるデザインの過去と未来」加島卓&山本貴光トークイベント
日時:2017年12月20日(水) 19:00〜21:00 (18:30開場)
場所:神楽坂・モノガタリ
詳細:http://www.honnonihohi.jp/detail/385
当日の動画:https://www.youtube.com/watch?v=Kuwr3wCmWaI

『オリンピック・デザイン・マーケティング』発売記念
加島卓+河尻亨一トークイベント「2020年の東京とデザイン」
日時:2018年01月17日(水) 19:00〜20:30(開場 18:40)
場所:二子玉川蔦屋家電 2Fダイニング
詳細:http://real.tsite.jp/futakotamagawa/event/2017/12/2020.html

「スポーツ・メディア研究のデザインをめぐって」
 佐藤彰宣『スポーツ雑誌のメディア史―ベースボール・マガジン社と大衆教養主義』と加島卓『オリンピック・デザイン・マーケティング:エンブレム問題からオープンデザインへ』の合同セッション。
日時:2018年1月21日(日)14時〜17時
会場:京都大学教育学部第2会議室
詳細:https://www.educ.kyoto-u.ac.jp/archives/5930

『オリンピック・デザイン・マーケティング』読書会
日時:2018年2月10日(土)15時半〜17時半
会場:赤坂・双子のライオン堂
詳細:https://peatix.com/event/334709

『オリンピック・デザイン・マーケティング エンブレム問題からオープンデザインヘ』発刊記念トーク(聞き手:永田晶子)
日時:2018年3月21日(祝・水)17:00-19:30(開場16:30)
会場:インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター
(港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5F 東京ミッドタウン・デザインハブ内)
主催:日本デザイン振興会
詳細:http://designhub.jp/events/3709/
当日のレポート:https://www.jidp.or.jp/ja/2018/04/10/odm_report

▼書評など

・「そもそも何が解決していないのか、問題の本質はどこにあったのか、それすら満足に語られないままだった。加島はエンブレム問題を「デザインの盗作問題」に矮小化せず、社会におけるデザイナーの在り方に踏み込んだ事件として扱う。21世紀のデザイナーが取り組むべき本質的課題をあぶり出す社会学書」『アイデア』(第380号)誠文堂新光社、2017年、http://www.idea-mag.com/idea_magazine/380/

・「読了して感じたのは、日本でも海外でも、そして過去も現在もオリンピックというものは、"揉め事"がとても多いイベントであるということ。…(中略)…。加島氏は、慎重に筆を進めながらも、ある"結論めいたもの"へと至る。そこが本書のクライマックスだ。「オリンピックとデザイン」をテーマにした歴史書でありながら、膨大な資料を整理し再構築する著者の手つきが鮮やかで、推理小説のようなスリルもある。加島氏はさながら探偵のようである」(河尻亨一「東京五輪「総合プランニングチーム」発表のタイミングでエンブレム騒動を振り返る【書評】」Yahoo!ニュース、2017年12月23日)、https://news.yahoo.co.jp/byline/kawajirikoichi/20171223-00079617/

・「第一に、前著との関係で言うと、専門職という見立て。デザイナーと広告代理店(電通)の立ち位置の違いは面白いです。…(中略)…。イリイチ的な専門職批判以来の「専門性と大衆性」古典的な命題とも関連しています。…(中略)…。第二に、資本主義(あえて古い言葉を使って恐縮ですが)という視点からの広告代理店を描いていること。…(中略)…。この部分だけでも、経済史・経営史研究者、それから政策研究者も読む必要がある。…(中略)…。第三に、とにかく決定プロセスが丁寧に描かれています。…(中略)…実証を重んじるタイプの政治史、経済史、経営史研究の人たちにとっても読みごたえがあるのではないか」(金子良事「加島卓『オリンピック・デザイン・マーケティング河出書房新社、2017年」社会政策・労働問題研究の歴史分析、メモ帳、2017年12月29日)、http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-489.html

・「日本のあの騒動はやはり異例の事態だったと思わざるをえない。…(中略)…。幻となった佐野研二郎氏によるエンブレムは優れたデザインだったと私はいまでも考えている。その選定に携わった人々も「よい良いものを選びたい」という意欲で参加ていたのだろう。だが、互いを慮った結果、個々人の良心は日本的な「忖度」の沼で溺れることになった。本書ではその経緯や原因も、研究者の目でクールにあぶり出している」(河尻亨一「エンブレム問題の真相」『福島民友』2018年1月6日、『沖縄タイムス』2018年1月13日、『新潟日報』2018年1月14日 ※共同通信社配信)、https://sites.google.com/site/oxyfunk/public/20180106-fukushimaminyu.jpg

・「議論のポイントは、オリンピック自体の変貌とともに、エンブレムに関して、その「作り方」から「使い方」へと焦点が移っていったこと。…(中略)…。そのボタンのかけ違いが、あの騒動の最大の要因だった…(中略)…、根気強くその議論を追っていけば、パクリか否か、やらせか否かといった短絡的な問いが、くだらないものに思えてくることは間違いない」(難波功士「「エンブレム騒動」の深層探る」『日本経済新聞』2018年1月27日朝刊)、https://sites.google.com/site/oxyfunk/public/20180127-nikkei.jpg

・「本書は膨大な量の史料や報告書、当時の記事を調査し、ツイッターなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)にも目配りして実相をあぶり出す。…(中略)…。「今に始まったわけでない」デザインを巡るもめ事の多さを明らかにした。…(中略)…。考察は多岐にわたるが、ハイライトはやはり「パクリ」「出来レース」疑惑の核心。緻密な分析を積み重ね、説得力がある説明を導き出す手法は、推理小説の「安楽椅子探偵」のようだ」(「『オリンピック・デザイン・マーケティング』 著者・加島卓さん」『毎日新聞』2018年1月28日朝刊)、https://sites.google.com/site/oxyfunk/public/20180128-mainichi.jpg

・「東京オリンピックのエンブレム問題…(中略)…本書はこの顚末をハイライトにすえた大著だが、いわゆるドキュメントではない。もっと大きな視野から、エンブレム問題の意味を掘り下げた歴史社会学の研究書である。…(中略)…。本書は、その後の騒動について、ネットが大きな影響力をもつようになった状況、出来レースと疑われたコンペの手続き、そして新しく選ばれた野老朝雄のデザインと市民参加の関係、という切り口から検証する。まさにエンブレムは時代の動向を反映してきたことが理解できる。…(中略)…、今後、建築の分野で、本書のように歴史的な文脈を踏まえた研究書の登場が望まれる」(五十嵐太郎「デザインから、時代の動向を読む歴史社会学」『東京人』都市出版、2018年4月号)、https://sites.google.com/site/oxyfunk/public/20180302-tokyojin.jpg

・「本書の圧倒的なボリュームに驚かされた。盗用かどうかといった印象論に与することなく、さまざまな関係者の言説や史料が丹念に跡づけられたことで、一種の謎解きを味わいながら、読者はこの問題の全容解明に迫ることができる。…(中略)…、専門家でなくとも理解しやすいように、重要な論点は太字で強調され、大変読みやすいものとなっている。本質的にはデザイン史や広告史を対象にした歴史社会学の書であるが、五輪をめぐる歴史社会学としても多くの論点を提供している」(石坂友司「東京2020オリンピック・パラリンピックの大会エンブレムのデザインとマーケティングを読み解く」『図書新聞』第3347号、2018年4月14日)、https://sites.google.com/site/oxyfunk/public/20180414-toshoshinnbun.jpg

▼エクストラコンテンツ

・『オリンピック・デザイン・マーケティング:エンブレム問題からオープンデザインへ』への補遺(1)、2018年1月14日、https://note.mu/oxyfunk/n/n90ec9d607108

▼本書の成り立ち
 これまでに公表したエンブレム問題への見解は以下の通りです。

・「グラフィックデザインと模倣の歴史的な関係:亀倉雄策佐野研二郎」(2015年7月30日)
http://d.hatena.ne.jp/oxyfunk/20150730
・「デザインは言葉である:東京五輪エンブレムと佐野研二郎」(2015年8月5日)
http://d.hatena.ne.jp/oxyfunk/20150805
・「アートディレクターと佐野研二郎」(2015年8月15日)
http://d.hatena.ne.jp/oxyfunk/20150815
・【ラジオ出演】「東京五輪エンブレム問題。その本質を考える?」(2015年8月18日、TBSラジオ『Session-22』)
http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/08/20150818-1.html
・【記事内コメント】「「酷似」ネット次々追跡」『朝日新聞』(2015年9月2日朝刊)
http://www.asahi.com/articles/DA3S11943116.html
・【記事内コメント】「Net critics central to Olympics logo scandal」『The Japan Times』(2015年9月3日)
http://www.japantimes.co.jp/news/2015/09/02/national/olympics-logo-scandal-highlights-power-of-the-internet-critic/#.Ver5WM4fNjc
・【テレビ出演】「東京五輪エンブレム“白紙撤回”の衝撃」『クローズアップ現代』(2015年9月3日、NHK
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3700.html
・【寄稿】「市民参加への道を探ろう」『毎日新聞』(2015年9月4日朝刊)
http://mainichi.jp/shimen/news/20150904ddm004070017000c.html

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・【記事内コメント】「現代デザイン考:五輪エンブレム問題/1 亀倉雄策の“呪縛”」『毎日新聞』(2015年10月27日夕刊)
http://mainichi.jp/shimen/news/20151027dde018040061000c.html
・【対談】河尻亨一+加島卓「五輪エンブレム問題、根底には「異なるオリンピック観の衝突」があった:あの騒動は何だったのか?」『現代ビジネス』(2015年12月28日)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47099
・【対談】河尻亨一+加島卓「「五輪エンブレム調査報告書」専門家たちはこう読んだ〜出来レースではなかった…その結論、信じていいのか?」『現代ビジネス』(2015年12月29日)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47141
・【対談】河尻亨一+加島卓「デザイナーをアーティストに変えた広告業界の罪〜日本のデザインはこれからどうなる?:五輪エンブレム騒動から考える」(2015年12月30日)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47191
・【記事内コメント】「五輪エンブレム 国民の意見に期待…最終候補に4作品」『毎日新聞』(2016年4月9日朝刊)、http://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20160409/k00/00m/050/085000c
・加島卓+永井幸輔「東京五輪2020エンブレム騒動以後のグラフィックデザイン」『アイデア』(第374号)誠文堂新光社、2016年7月、pp.125-131、http://www.idea-mag.com/idea_magazine/374/

※被引用記事:増田聡「オリジナリティと表現の現在地──東京オリンピック・エンブレム、TPP知的財産条項から考える」
http://10plus1.jp/monthly/2016/01/issue-03.php