メディア論を女子に講義する困難?

【1】「メディア論を女子高生に講義すること」に困難を感じていたら、「メディア論を女子大生に講義すること」に困難を感じていた方々に会った。メディア論のトピックは、どうしようもなく男子臭が強く、自分が面白いと思えば思うほど、女子には伝わらない(と感じることが少なくない)。勿論その逆もあるだろうが、このような構図になってしまうのも、メディア論のトピックの多くが、語り手の中高生時代の試行錯誤と切り離せないものが多いからなのだと思う。気がつくと、単なる思い出話になっていたという授業、ありませんか?
 
【2】いい加減な私は、最近になって「第三の歴史」という言葉をよく使う。「第一の歴史」を、資料を重視した日本史的な記述だと考え、「第二の歴史」を、物語を重視した社会史的記述とする。そしてなんでもかんでも歴史資料をデータベース化するデジタル・アーカイブは、「第一の歴史」のバリエーションのようにも思えるが、実のところ「連想された言葉とメタデータが一致しない限り、表示されない」という意味においては、また別の歴史なのではないかと考えたからである。資料そのものへ問いが宙吊りにされたまま、アカウントの獲得に躍起するのも、どこか奇妙な話である。

【3】「●●、読んだ?」(漫画)や「●●、観た?」(映画)といった会話にあまり馴染めない私だが、週刊ビッグコミックスピリッツで連載されていた『ファイン』(信濃川日出雄小学館、全4巻)は面白かった。「スーツを着たら負け」といつの間にか語らされてしまう、無根拠の根拠が垣間見られます。「アーティストになれる、なれない」をめぐる、勘違いと葛藤の物語こそ、美大系マンガの面白いところ。

【4】馴染みの場所が、なくなりつつある。表参道のナディッフ青山ブックセンター渋谷HMV店に続いて、ブックファーストの渋谷店も閉店。移転はしても、その場所が私の20代を支えてくれたという記憶はもう再現されない。さらに先日銀座へ行ったら、かつての勤務先が入居していたビルがまるごと取り壊されていた。物理的な消去を前にすると、何を思い出せばよいのかを思い出すことが難しい。

※12月16日(日)に、日本広告学会(@メルパルク京都)の全国大会で、「「職業」としての広告制作者」という発表を行うことになりました。詳細は、後日お知らせします。

fine. (4) (ビッグコミックス)

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