30代の緩い連帯

 20代に慣れ始めた頃、サブカルチャーを語る30代は、「まだまだ私も…」と主張しているようで、「そんなに無理しなくても…」と思っていた。今となってみれば、自分がそのように思われるのだろう。私の20代は、東京国際マラソン(2005年)で優勝した高橋尚子の「がんばれ、30代!」に涙した時に、終わったのである(そんなもんだ)。

 30代の連帯は、いろいろあるけど暖かい。10代や20代のような、「あいつとわたしは違うのよ、わっかるかな〜」的な冷たさが、小さなものに見えてくる。多文化主義的な相対化の果てに、「お前もな」と断念含みの緩やかな合意を試みていくわけだ。現在の私にとって、30代的な老いとはそのようなものである。

 だからこそ(?)、しまおまほ辛酸なめ子鈴木謙介のおしゃべり「恋と三十路と文化系 〜さまよえるオトナ女子のためのLife堂ボヘミアンナイト」(2008年2月28日、リブロ東池袋店)には、必ず行こうと思った。30過ぎても女子、「オトナ女子」の世界の話を、30代的な緩い連帯の耳で、聞いてみたかったのである。

 そこでのオトナ女子とは、所謂「文化系」で、その定義はともかく、「オリーブ少女」なるものに、強い反発は覚えない程度の立ち位置のこと。雑誌『Olive』は既に廃刊されたけれども、最近になってその「亡霊」が動画サイトを徘徊していたりもする。

 細かい作り込みはともかく、まぁポスト・オリーブ少女が、エコ・ロハス・ヨガ方面へ流れていることへの違和感は、シブヤ系男子として勝手に共感する。「オリーブ少女って、こんな感じじゃねえよ」と、1990年代半ばのHMV渋谷店の中二階を思い出しながらつっこむ。「カジくんの半ズボン」に反応する、タートルネックのショートヘアは、どこへ行った?

 さてオトナ女子のおしゃべりのなかでも、ハード・エコの人は「(あの時に)声が大きそう」という、しまおまほのエコ=エロ説には爆笑。人が少ない田舎に住むには、それなりの理由があるというわけだ。その真偽はともかく、このように言ってしまいたい位、エコを実践している人がそのことを黙ってはいられないことに対する、オリーブ少女としての苛立ちにもうなずく。

 またある程度の年を重ねてからの、小泉今日子・YOU・宮沢りえ永作博美などへの評価も同感。ちょっと位は影があったほうが、「女としてのひっくり返し」がうまくいく。この逆のひっくり返しは厳しいだろうし、ひっくり返さなければピンク・レディー松田聖子のような徹底路線なのだろう。オザケンと別れた渡辺満里奈が、ネプチューンの名倉と結婚したことは、先のポスト・多文化主義的に処理するしかないように思う。

 「本やCDの貸し借りから始まる恋愛」とその貸し借りが終わってしまったらどうしようという不安、「お互いの悩みをネットで検索して支え合う恋愛」、「美大系」とラベルを貼られて飲み会などで浮いてしまうことへの苛立ちなどなど、ひとつひとつに笑ったり、頷いたり。

 ところが終盤に突然の腹痛に襲われ(夕飯、食べ過ぎた…)、前から二列目だというのに、ひとりおっさんが汗だくで目をつむってしまう状況に(涙)。ほとんど記憶がないので、いずれ公開されるであろうポッドキャスティングで復習することにします。それから、『しまおまほのひとりオリーブ調査隊』(プチグラパブリッシング、2004年)は、メディア論と社会学の素。

▼文化系トークラジオ Life
http://www.tbsradio.jp/life/

しまおまほのひとりオリーブ調査隊

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