どこまでも同じ風景を。

oxyfunk2007-09-17

 映画『NANA』やドラマ『東京タワー』には、私が住む街が登場する。その設定はどちらも似ていて、要するに地方から上京した夢追いキャラが、家賃の安さを優先して、とりあえず最初に住み着く街だということ。住まいはギリギリ東京都で、目の前には多摩川が流れる。その対岸のぼんやりした風景の中に、私は住んでいる(涙)。
 
 だからそこは「東京ではない、どこか」として、抽象的に登場する。それを象徴するのが、マンションやファミレスや道路の光である。多摩川の向こう岸には、「どこまでも同じ風景」たる郊外が広がっているのだ。
 
 こうした風景のなかで育った私にとって、旅とは「巡るべき差異との出会い」ではなく、「繰り返す類似性の確認」である。「そこにしかない風景」を訪れるというよりも、「どこまでも同じ風景」を彷徨い求める感じで、不思議とそれで落ち着く。
 
 だから京都案内でも、「古都」を知る地図ではなく、「都市」を知る「ぴあmap」を購入する。観光ルートの紹介よりも、娯楽スポットの俯瞰のほうが、いつものように楽しめるからだ。歴史や文学など「物語」に媒介された京都の歩き方は、事後的に復習する程度が心地よい。
 
 とはいえ、今回は資料を漁るだけでなく、保津川を下り、竹林を抜け、鰊蕎麦を食した。充実した時間と場所をご提供くださったみなさまには、深く感謝。立命館へは、西院から市バス205で北上し、衣笠校前で下車後、平野神社横のパン屋・ブリアンを覗いて行くのがお気に入り。河原町の飲み屋で畏友と聞いた、徳永英明の「恋におちて」は心に染みた。それから、Charaのベスト盤も。

VOCALIST3

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※「NANA-ナナ-」ロケ地写真館
http://www004.upp.so-net.ne.jp/mcdls/nana.html

 『graphic/design』(第4号、左右社、2007年)に、「連鎖と忘却のすずらん通り」という連載論文が掲載されました。「光」がいかにしてデザイナーのネタになったのかを、ネオンサインの誕生にまで遡り、その実践たる「すずらん通り」が、どのように各地で模倣されていったのかについて述べています。前回と今回は、実証より論理が先行してしまっている点があるので、次回以降はもう少し丁寧に書こうと思います。大型書店のデザイン棚などにありますので、よろしくご笑読ください。

季刊graphic/design[グラフィックデザイン]4号

季刊graphic/design[グラフィックデザイン]4号