book

天野祐吉編「広告」『日本の名随筆』別巻23、作品社、1993

広告との出逢いに耳を澄ましてみよう。鶴見俊輔(「私の愛読した広告」)は言う。「きれいにだまされると、その広告にたいしても、あまりにくしみはわかないようである」。これほど広告とのつきあい方を簡潔に表現したものはない。だから僕らは広告を「騙そ…

松谷みよ子『現代民話考(12) 写真の怪・文明開化』、筑摩書房、2004年

カメラを向けてはいけない場所がある。理由はわからない。とにかく「いけない」のだ。そうしたローカルな言い伝え、人々の語りのなかに僕たちは当時のメディアの経験のされ方を発見していくことができるだろう。『現代民話考(8) ラジオ・テレビ局の笑いと…

吉見俊哉、花田達朗、『社会情報学ハンドブック』、東京大学出版会、2004年

いつまで続くかわからないがとりあえずいまのところは「社会情報学」を大切にしたい。60弱の「扉=項目」のなか、「進化とコミュニケーション」(平石界)、「リアリティ・テレビ」(北田暁大)あたりが響きとしては新鮮。 進化論的視座からコミュニケーシ…

橋爪紳也『飛行機と想像力』青土社、2004年

この人も多産だなぁ。「航空機そのものについては素人」でもいい。「飛行機」という経験がもたらした視覚への欲望や時空間感覚は、ヴォルフガング・シヴェルブシュの『鉄道旅行の歴史』(法政大学出版局、1982年)の仕事のように示されるべきだろう。それだ…

ジャック・ブレーブス著、岡部英雄/本郷均訳『合理性とシニシズム 現代理性批判の迷宮』、法政大学出版会、2004年

「シニシズム」とあるとついつい手にとってしまう。その程度の理解(?)でしかないのだが、僕的には「シニシズム」がもつ「希望のなさ、目的のなさ、諦念、無関心」が生み出す「何でもかまわない」的「相対主義」を、メディアと人間の関わり方で考えてみた…

鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二『戦争が遺したもの 鶴見俊輔に戦後世代が聞く』、新曜社、2004年

東大が嫌いな人間は少なくないと思うが、鶴見俊輔はそれを電車の中で大声で表明していたという話を聞いたことがある。ある時は自由主義に、またある時は軍国主義に従順たろうとするしたたかな「知識人」=「学校エリート」を生産し続けた装置として東大が鶴…

前川修『痕跡の光学 ヴァルター・ベンヤミンの「視覚的無意識」について』、晃洋書房、2004年

いわゆる博論本には「誰が買うのだろうのか」という素朴な疑問をもちかねない値段設定が多い。きっと僕みたいな貧乏学生は博論本のマーケティングターゲットには含まれていないんだろう。値段だけで判断すれば、より広範に「読まれること」よりも図書館に「…