鶴見俊輔、上野千鶴子、小熊英二『戦争が遺したもの 鶴見俊輔に戦後世代が聞く』、新曜社、2004年

 東大が嫌いな人間は少なくないと思うが、鶴見俊輔はそれを電車の中で大声で表明していたという話を聞いたことがある。ある時は自由主義に、またある時は軍国主義に従順たろうとするしたたかな「知識人」=「学校エリート」を生産し続けた装置として東大が鶴見にとって問題なのである。だから彼は「不良」であり続けようとするのだろうか。それにしても小学5年生で「アナーキズム」という言葉を覚えていたり、「カルモチン(睡眠薬)」を120粒飲んでみたりは、「不良」なんですかネ。
 「歴史は、それを学ぼうとする者の前にしか姿をあらわさない」という上野と、いまだに「戦後世代」でしかない小熊が、鶴見俊輔という「戦争が遺したもの」に向き合い、「戦後」を理解しようと試みたもの。「残り少ないボク(鶴見)の人生で三日間といえば、じゅうぶんに長い時間」である。彼に「何が起きてもふしぎではない」現在のうちに読んでおきたいもの。