生明俊雄『ポピュラー音楽は誰が作るのか:音楽産業の政治学』頸草書房、2004年

 作品が商品となることに孕む政治性。作品化するのが人間であると同じように商品化するのも人間である。作り手と送り手の間の葛藤を捉えた本書には、あるメディアのメディア性を浮き彫りにしたり、テクストとしてのメディア研究ではなかなかみえてこないメディアの政治経済学へのこだわりがある。日常私たちがなんとなく聴くことがある音楽が何を意味するのかではなく、音楽を聴くという経験そのものがどのような条件によって可能となっているのかを示すこと。文化研究の面白さはここにあると思うが、こうした研究は対象との遠くもなく近くもないバランスよい距離感が問われる。本書においては内在的観察者としての生明俊雄だからこそ記述できたことは少なくないと思われるが、それをいわゆる「産業社会学」ではなく「政治学」とした点は他のメディア産業を対象化する場合にも生かされるべき点であろう。ブーアスティン的には、ヒットソングはあらかじめ「ある」のではなくて、ヒットソングに「なる」のでしょうな。