「読むキーワード:外国人講師」『朝日新聞』(2005年6月7日)
昨日の「英会話講師」の件で、3月3日に以下のような記事があった。
「英会話「ノヴァ」、外国人講師を社会保険に加入させず 」『朝日新聞』(2005年3月3日)
「大手英会話学校「ノヴァ」(統括本部・大阪市)が、外国人講師を法律で義務づけられている健康保険や厚生年金に加入させていないことが3日わかった。ノヴァは未加入者がいることを認めた上で「母国に帰る外国人は加入しても将来的に年金はもらえず、現制度には問題がある」などと主張しているが、社会保険庁は「現行の法律に違反しているなら問題」として調査する方針だ。
外国人講師らが加盟する労働組合「ゼネラルユニオン」(大阪市)が同日、大阪市北区の大阪司法記者クラブで記者会見して明らかにした。同労組は、健康保険法や厚生年金法違反にあたるとして、捜査機関への告発も検討している。
同労組によると、ノヴァは、外国人講師約5000人を保険や年金に加入させていないという。採用時に加入が義務であることなどを告げない一方で、健康保険代わりに同社の子会社が扱う民間保険会社の「海外旅行保険」の紹介をしているという。
健康保険法と厚生年金法は、国籍を問わず、2カ月間を超えて常時働く人については、企業側が強制加入させるよう定めている。同社の外国人講師は通常1年ごとに契約を更新することになっており、同労組は「加入義務の要件を満たしている」としている。
未加入の場合、従業員は病気の際に十分な保障が受けられなかったり、老後に年金を受け取れなかったりする。
ノヴァの広報担当者は「現行の制度は外国人労働者にとって問題がある。現状に即した制度づくりが必要だ」と話す。民間保険の紹介については「通訳や医療機関の紹介などのサービスが付いており、日本に不案内な外国人に適した商品」としている。
しかし、社会保険庁医療保険課は「現行法に不満があるからといって、それを守らないのは問題だ」と指摘する。
会見に出席した米国出身の講師ロバート・ビソムさんは「説明を受けていれば、紹介を受けた民間の保険には入らなかった。未加入は悲しいことだ」と話している。」( http://www.asahi.com/health/insurance/OSK200503030050.html)
NOVAは諸外国からの人材受け入れの最大手の一つでありながら、そこで働く講師たちの離職率が高かったのを記憶している。一つは、NOVAから他の英会話学校へというパターン。もう一つはNOVAで英会話講師に見切りを付け転職というパターン。前者の場合はワーキングビザ所有者も含まれ、一時的な滞在者が多く、後者の場合は語学以外の素養に重点に置いた就職活動が可能な長期滞在希望者が多かった。NOVAが「採用時に加入が義務であることなどを告げない」ことは問題だが、「健康保険代わりに同社の子会社が扱う民間保険会社の「海外旅行保険」の紹介をしている」のは、NOVAに勤務し続ける講師が少ないことに理由の一つがあるのではないか。するとなると、短期滞在者の勤務が多数を占めるようになり、それを前提にした保険を紹介しても不思議な話ではないところもある。
この社会保険の件は、「外国人講師」の雇用をめぐる微妙な構造に支えられているところもある。英会話を学びたい人が増加し続けているという現状(生徒数約101万:2002年)と1990年の入国管理法改正による講師の増加(外国人講師数15800人:2002年)、そしてこれを支える英会話学校業界の急成長(年間売上高1826億円:2002年)。僕が出逢ってきた人達もこの中に含まれ、「短期間で帰国するために年金加入などを望まない」声はしばしば聴いていた。この保険と雇用の関係をどのように考えるべきか。今の僕にはとても及ばない課題であるが、短期滞在者の雇用締めつけを回避するために、雇用の流動性を一国主義とは異なる文脈で議論する可能性があってもいいはずだ。
またしても「東北アジア共同体」構想がちらついた。中国、韓国の英語熱も知られていることだし。