社会化したカーニヴァル

 年に2回、お台場の国際展示場で開催されるクリエイター・フェスティバルに「デザイン・フェスタ」というものがある。出品条件は作品がオリジナルであることのみで審査はない。これはこれで面白さと難しさを抱えているのだが、スターやアーティストを積極的に輩出しようとしない姿勢が僕は気に入っている。
 作品を創り発表してもらう場を「登竜門」として位置づけるのは、伝統ある「美術」的な考えとして重要で、そこで鑑賞者は作品の理解と同時に作家(内面)への距離測定が図られる。しかし、デザインフェスタの面白さはそういうところにはない。作品発表の場は「バザール」に近い。その面白さは単純な売り買いにではなく、作り手と訪問者が直接に会話を交わす交渉にある。
 有名性を志向するクリエイターにとって、デザインフェスタは不十分な場所かもしれない。これをエリート的立場から「高校の学園祭」と評する人だっている。でも、それはデザイン・フェスタの困難を意味しない。なぜなら、デザインフェスタはそのイベントの大事なところを有名性の生産には置いていないのだから。
 デザインフェスタの面白さは「出逢い」にある。無名/有名の区別をとりあえずは置いた作品制作にとって作家性の理解は二次的な問題だ。コミケGEISAI、そしてクリエイターなるものを「ソフトパワー」として国策化しようとする動きとも異なる、ささやかなクリエイターとしての「私」の在り方を僕は肯定したい。

※参考:
▼デザイン・フェスタ(事務局によるヴィジュアル展開はド派手だが、お台場のイベントも原宿のギャラリーも妙に暖かい。次回は11月。)
http://www.designfesta.com/jp/index.html