戸田ツトム、鈴木一誌「ブックデザインの風景化と言語化をめぐって」『ユリイカ』青土社、2003年9月号

 なるほど「ブックデザインというのは、グラフィック・デザインというよりはインダストリアル・デザイン的」であり、装幀は原稿の「<身体>化」である。装幀においてどこまでが文字でどこまでが図像なのか。<地>が<図>に溶け込んでいく事態、これこそが「ブックデザインの風景化」であると戸田と鈴木はいう。なぜ<文芸>において文字と図像が一致したデザインが多いのか、出版はデザインの<他者性>をどのように位置づけるのか、デザインはデザインの<エッジ>をいかに効かせるのか、等々。
 そういえば、僕はいつから<地>と<図>を分離したものとして捉えるようになったのだろう。もともとは、いや今でも<地>と<図>は一緒なのではないか。社会や文化のコードのなかでそれらを戦略的に分離し、それを見極められるとした者がデザイナーという職業的専門性を積極的に獲得していったと考えることはできないだろうか、と思ってみたり。