「外国語学校を一斉調査 社保庁、外国人講師保険未加入で」『朝日新聞』(2005年6月6日夕刊)

 「英会話講師」として世界各国を廻る人々は少なくない。日本はその大きな市場の一つである。いろんな人に逢ってきたけれども、滞在して数年で「英会話講師」であることを言いたがらない人は多い。ある意味で「英会話講師」は入国の建前にすらなっている面があり、数年したら企業秘書やIT業界に転職する人もいる(クラブDJも昼間は「英会話講師」という場合もある)。グローバル化のなかで語学を教えるということが持つ意味を、移動する側と受け入れる側の両方の側面からいずれ考えてみたい。
 

 「外国語学校が外国人講師の多くを社会保険に加入させずに保険料逃れをしている疑いがあるとして、社会保険庁は、外国語学校を運営する企業約750社すべての立ち入り調査を始めた。健康保険法と厚生年金保険法では、2カ月を超えて常時働く人に対し、国籍を問わず、健康保険と厚生年金に強制加入させることが定められている。保険料は労使折半だが、十分な説明を受けないまま未加入になっている外国人講師は少なくないといい、社保庁が是正する。医療費が全額自己負担になるなど加入を訴える声があがっていた。

 社保庁によると、以前から加入漏れの話があり、一部には指導もしていたが、なかなか改善されないため、今回の調査に乗り出した。

 外国語学校は、経済産業省の調査で、02年現在で、外国人講師が約1万5800人。社保庁が特定の業界を全国一斉調査するのは異例という。

 社保庁によると、雇用する際、加入義務の制度を説明せずに強制加入させていないケースが多いという。健康保険の代わりに子会社の扱う海外旅行保険を紹介している場合もあるとされる。

 大手英会話学校ベルリッツ・ジャパンでは、外国人講師約1200人のうち希望した100人だけが加入しているという。

 社保庁はこうした実態を重視、全国の社会保険事務局職員が学校側に立ち入り、勤務表や雇用契約書などを調べ、加入対象者なのに未加入者がいた場合は加入させる。

 大手英会話学校NOVAの英国人講師(32)は採用されて5年目だが、保険加入を希望したものの学校側に断られた。昨年、仕事中にけがをしたが、30万円を超える治療費や通院費は自己負担になっている。

 NOVA教職員組合のボブ・テンシ代表は「日本に根を下ろす外国人も増え、病気や事故で深刻な人もいる。フルタイムで働く講師はみな加入させるべきだ」と話す。

 外国人講師の未加入について、ベルリッツ・ジャパンの岩井正典・労務担当部長は「日本に短期間しか滞在しない講師が多く、社会保険に入るのを望んでいない人も多い。ただ、行政の指導には従う」と説明する。最大手のNOVA統括本部の広報担当は「担当者と連絡がつかない」という。

 今回の一斉調査について、杉山昇・社保庁医療保険課長補佐は「加入させてほしいという要望が個人や労組などから出ており、放置できない」と話している。 」(http://www.asahi.com/life/update/0606/010.html?t1