引用すればするほど…

oxyfunk2004-04-19

 やたらと説教くさい映画「イノセンス」のことはあまり覚えていない。一つ感想を言うのなら、ポピュラーカルチャーの隙間に滑り込む「知識なるもの」の前のめりな語り方にはちょいと違和感を覚えた。いやいや、きっと士郎正宗押井守はものすごく勉強したに違いないし、それはそれでいい。こうしたことは「ガンダム」3部作の冨野由悠季にだって感じられる。
 それでも、映画制作者の「知識なるもの」への距離感を感じることが出来なかったのはツラい。引用すればするほど宙に舞い上がるデカルトや聖書の言葉。なぜそれらが語られなくてはならないのかが問われないまま、それらをそのまま語ることがなにかの深層を捉えているような錯覚を与えてしまうという奇妙さに気がつかずにはいられない。その意味において「イノセンス」は思想ではない。それは愚直なまでに思想を偽装したエンターテイメントであり、その意味においては力作であるといえる。