吉田光邦『[図説]技術と日本近代化』日本放送出版会・放送ライブラリー10、1977年

 『万国博覧会』研究の吉田光邦の専門が科学史・技術史だったのに納得。今思う。産業を機械化すること、生産量を大量化することはどれほどの欲望だったのだろう。いやいや、「アナログ」とか「デジタル」なんていっている僕だって例外じゃない。こうした技術への夢が国防国家体制やテクノ・ナショナリズムと結びつけられることがある。それはそれでいい。それでもそうした人文系的な思想と距離をとる彼らの知と実践は記述されなくてはならない。それは安易な国民国家批判に回収されるのではない、夢と希望と欲望と苦悩に満ちた油っぽい記述である。油面に浮かぶ大量の図版をみてほしい。目に見えるものを作ることに夢中だった人間の姿がそこにある。この「目に見えるもの」こそ吉田を『万国博覧会』研究へといざなうものに違いないだろう。