スーザン・ソンタグ著、木幡和枝訳『良心の領界』NTT出版、2004年

 ソンタグは2つの「思考活動」をお願いする。「歴史的な認識」を「政治的見解の糧」にすること。「言葉、単語を精査し、ある言葉を使ったらその結果、話がどんな領域に入り込むのかを理解」すること。「人道的介入」という言葉で隠蔽されてしまうことに敏感にならざるをえない彼女にとって、それは「一種の道義上の卑劣行為というか、不埒な行為」である。名前をめぐってはそれだけではない。あの建物が「世界貿易センター」と呼ばれることで標的になってしまうこと。そんなに単純ではないと思うのだが、それでも「名前」によるイメージへの固定化に慎重にならざるをえない。<語る>ことに鈍感でも敏感でも決して「安寧な状態」を望まないソンタグの姿勢は文学者としては明確である。