準備運動としての「コンビニ」

 吉見俊哉・若林幹夫『東京スタディーズ』(紀伊国屋書店、2005年)を読んで、街にはじめて「コンビニ」がやってきた小学生の頃を想い出した。「コンビニエンスストア」という発音が難しかった。初めての買ったのはミント菓子で、一番嬉しかったのは海苔がパリパリのままおにぎりを食べることができたこと。「コンビニ」そのものが当時は珍しかったので、それまでは普通に米屋の店員だった兄ちゃんが、急に「うちの店においでよ…」と調子良さそうに話していたのを何となく記憶している。駄菓子屋や文房具屋が子供一人で行く処で、スーパーやデパートは親と一緒にいく処。「コンビニ」は、小学生(「僕」)から中学生(「俺」)になっていく過程で、自分を社会に埋め込んでいく準備運動をする処だったのかもしれない。