未来みたいな匂い

oxyfunk2004-08-18

 コピーの光が眩しい夏。サングラスくらいかけたい…。オリンピックや甲子園は「どうだかな」くらいの気分で、とにかく最近は一日で4年分の月刊誌を読み進めています。
 資料のなかに1960年代のガソリンスタンドの写真があった。今も昔もガソリンスタンドはお気に入りである。どこか「未来みたいな匂い」がしていて、そこからひょいと宇宙へといけそうな場所。
 『ジェネレーションX』(ダグラス・クープランド著、黒丸尚訳、角川書店、1992年)の主人公の一人であるダグは、友人に“(もしも)地球を去る時に記憶をひとつだけ持っていくならどのような瞬間か”と聞かれ、ガソリンスタンドで目を閉じて深呼吸をした瞬間を挙げている。注油を無事にこなせなかったダグは、父に怒られると思いきやニッコリされて「なあ、お前。ガソリンの匂いっていいだろう。眼を閉じて、吸い込んでみろ。とっても清潔だ。未来みたいな匂いがする」と言われる。言われたようにしたダグは、その瞬間、「瞼ごしに太陽の鮮やかなオレンジの色の光が見えて、ガソリンの匂いがして、膝がガクガク」した。このダグの瞬間のイメージが僕とガソリンスタンドを結びつけている。『ジェネレーションX』を今読むと、“んなことナイナイっ”的な突っ込みどころが満載なんだけれども、“X世代”って言葉を同時代的に感じたかった二十歳の頃の自分は否定できない(笑)。
 今はほぼ死語に近いけれども、クリエイティブの歴史において“X世代”は単なる時代のマーケティング用語以上のものであったような感覚があるので、これはいつかまとめて書いてみたい。