中井正一の「集団的主体性」

 1930年代の思想が、じわじわと染みてきた。正直なところ、広告制作者の歴史において「中井正一」をどのように扱えるのかは困っていたのだが、ここになって彼の「集団的主体性」をめぐる議論はそれなりに居場所を見つけようとしている。「技術性」や「模倣性」を前提とした「職人」的な芸術観、「創造性」を前提としたロマン主義的「天才」の芸術観、「記録性」や「企画性」などを前提とした「集団」による芸術観。中井の構想はこんなに単純ではないだろうが、鶴見俊輔の解説もあって20世紀の大衆芸術の在り方はそれなりに見えてきた。
 しかし新しい視野が開ける度に、吉見俊哉さんの無駄のない足跡が発見され、いつもながら驚いてしまう。三木清の「構想力」もしっかりと先取りされていました…。

美と集団の論理

美と集団の論理

一九三〇年代のメディアと身体 (青弓社ライブラリー)

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