<科学なるもの>

 デザインを「科学的」に考えるセミナーに参加。時間の半分以上が「大脳科学」の話だったことに震撼。思想から意図的に距離を置いたデザイン人が、<科学なるもの>を無批判に採用・援用しているその思想的免疫のなさに少なからず違和感を覚える。そうした状況で僕はどのように声をあげていけるのだろうか。言葉に丁寧になればなるほど、言葉から距離を置いている人に響かなくなるという切なさ。1930年代の形式主義者と彼らの思想との関係をついつい想起してしまうのは、歴史的連続性を感じているからかも。
□買い物□
・W.ヘンクマン/K.ロッター編、後藤狷士他監訳『美学のキーワード』頸草書房、2001年
 素直に認めたい。こういう本は便利だし、地図を書く前にイメージを描かせてくれる。長い時間をかけて読んでいきたい。
・原克『書物の図像学』三元社、1993年
 旧友が勤めていた出版社だ。当時は学問と出版における三元社の位置づけに敏感ではなかった。キットラーの本の装丁もしたとか言っていたよね。きっときっと頑張っていたんだろうな。さて、独特の言い回しがある本書の目的は<書物>の隠喩の系譜をたどること。「コンピュータのイメージ学」を描きたかった著者が、ベンヤミンの『一方通行路』にはじまりカフカのテキスト群で論を閉じているのは興味深い。<文学なるもの>が示唆するメディア論的想像力はここにも。
・『ブレーン』宣伝会議、2004年3月号
 この手の雑誌は「あおぶっく(青山ブックセンター青山・六本木・新宿店)」で立ち読みかな。それでも購入したくなるのがふしぎふしぎ。決め手は「情報の編集センス」と「感性に響くタイポグラフィー」の二つの題目。思わず合掌。