『文化人とは何か?』

 南後由和+加島卓(編)『文化人とは何か?』(東京書籍、2010年)が刊行されました。誰も深くは信じていないのに、どういうわけか語り続けられてしまう形象としての〈文化人〉。私たちは〈文化人〉という「何か」をうっかり口にしてしまうが、その中身や境界線を広く共有しているわけでもなく、するつもりもありそうにない。本書はこうした曖昧な社会的現実がどのように現象してしまうのかを、各分野の具体的な事例から書き取ったものです。帯や広告は出版社によるものなので、そのあたりは引き算しつつ、ご笑覧頂けると幸いです。目次は以下の通り。

南後由和+加島卓(編)『文化人とは何か?』東京書籍、2010年

はじめに/本書の構成

第1部 文化人の条件
 第1章 南後由和 文化人の系譜
  コラム1 阿部純 日本の栄典制度:文化勲章

第2部 作家/批評家と文化人
 インタヴュー1:福田和也 文化は社交から生まれる:批評の「現場」を作るということ
  コラム2 阿部純 文化人の墓
 第2章 田中東子 軽さをめぐる冒険:室井佑月的なものについて
  コラム3 堀口剛 「編集者」が「作者」になるとき:三浦展という事例から
 第3章 荻上チキ ウェブ時代の文化人:といっても特に代わり映えもなく

第3部 アカデミズムと文化人
 第4章 佐倉統 疑似科学謳歌する文化人たちはなぜ増殖し続けるのか:脳科学の事例を中心に
 第5章 飯田泰之 市場を語る文化人:「経済の専門家」とは何の専門家なのか
 第6章 石田佐恵子 〈女性文化人〉の構築とその力学:〈女性文化人〉は消滅するか?

第4部 テレビと文化人
 第7章 近森高明 「芸人」転身物語:〈お笑い〉と〈文化人〉のジレンマをめぐって
  コラム4 松谷創一郎 「スピリチュアル文化人」の今後
 第8章 高野光平 違いがわかる男たち:テレビCMの中の文化人
  コラム5 松谷創一郎 中田英寿高橋尚子が提示する新しい「アスリート文化人」像
  コラム6 香月孝史 歌舞伎俳優の「格調高さ」
 第9章 新藤雄介 「ニュースキャスター」の振る舞い:ジャーナリストと文化人の間
 第10章 逢坂巌 選挙報道にみる「文化人としてのテレビ」

第5部 表現/業界と文化人
 インタヴュー2:磯崎新 事件としての建築:クライアント列伝
  コラム7 田代美緒 クラシック音楽の女性演奏家
  コラム8 松谷創一郎 類例なき坂本龍一の文化人活動
 第11章 加島卓 デザイン/デザイナーを知ることの戦後史:職能と人称性
 第12章 難波功士 「ビジネスモデル」としての広告系文化人:その神通力の生成と消滅
  コラム9 松谷創一郎 「『タレント』ではないタレント」として文化人

 終章 加島卓 OVERVIEW:語りやすさをまとめることの困難

あとがき/謝辞
人名索引

文化人とは何か?

文化人とは何か?

 刊行に関わることとしては、2010年10月30日(土)の日本マス・コミュニケーション学会@東京国際大学で「有名性と文化人:現代メディアにおける人称性の消え難さ」というワークショップを行う予定です。お時間がありましたらどうぞお越し下さい。