第7回竹尾賞

 2008年5月に左右社より刊行した拙稿「デザインを語ることは不可能なのか」(『文字のデザイン、書体のフシギ』所収)が、第7回竹尾賞(デザイン評論部門)を受賞しました。

 竹尾は見本帖という紙のショールームで知られた専門商社で、竹尾賞はヴィジュアル・コミュニケーションのよりよいあり方や活動を導く評論活動を表彰しているものです。今年は柏木博さんが審査員となり、2008年12月31日までの1年間に書籍、雑誌、学術研究誌、新聞等で発表されたデザイン評論記事を対象に審査が行われました。

 正直なところ、拙稿はツメの甘いところも少なくありません。審査員の柏木博さんからは、「是非、若い学生のみなさんにも読んでもらいたい」との暖かいお言葉まで頂きましたが、基本的には私自身の不勉強と悪文癖を臆面もなく晒しておりますので、適当に引き算しながらご笑読頂けると幸いです。

 内容を簡単に言えば、「美の本質なるもの」を強く前提してしまう限りはデザインを語ることはできないだろうということ、またそれゆえにデザインを「芸術」と捉えることには慎重になれないかということ、さらに単なる事実確認ゲームに終始するのではなく、歴史記述そのものが歴史的に拘束されているという具体的事実を織り込んで歴史を書かなければならないだろうということ、などを述べております。より端的に言えば、「デザインを語ろうとして、なぜか失敗してしまうこと」の歴史社会学となっており、博士論文で書きたいことの素描にもなっています。

 なお竹尾賞(デザイン書籍部門)では、バーバラ・スタフォード『実体への旅』(産業図書、2008年)ほかが選ばれ、訳者の高山宏さんや装幀を担当された戸田ツトムさんらが、竹尾賞(特別審査員賞)では、杉浦康平さんが受賞されました。

 結果的に神戸芸術工科大学関係者が多くなったのは、杉浦康平さん以来のエディトリアルデザイン関係者が、デザインを語ることへ一定の緊張感を持ち続けてきたからだと思います。またスタフォードについては、以前『ヴィジュアル・アナロジー』(産業図書、2006年)の書評にも書いたのですが(http://booklog.kinokuniya.co.jp/umatforum/archives/2007/07/post_13.html)、基本的に彼女自身を信じるかどうかなのだと思います。黒眼鏡の〈学魔〉、高山宏さんは、一生付き合っていくとおっしゃっていました(笑)。

※竹尾賞
http://www.takeo.co.jp/site/co/cultural/award.html
※出版社のプレスリリース
http://www.sayusha.com/

 大型書店のデザイン棚などでお求め頂けると大変ありがたいですが、地域や大学の図書館などにも所蔵されておりますので、なければリクエスト頂けると幸いです。